いつからだろう、僕らがSNSに求めるものが少しずつ変わってきたのは。
完璧な笑顔、計算され尽くした構図、フィルター越しに切り取られた理想の日常。あれはあれで素晴らしい時代だった。誰もが憧れたし、ときには背伸びもした。でも、気づけば、なんかちょっと疲れてない？ 息苦しい「映え」競争から、そろそろ抜け出したいと心のどこかで思っていたんじゃないだろうか。
フォロワー数至上主義でもなければ、いいね！の多寡で心が揺さぶられることも少なくなった今、僕らはもっと違うものをSNSに求め始めている。それは、自分自身を、そして日々の暮らしを、もっと楽しく、もっと賢くするための「攻略法」を見つけることだ。
「人生をハックする」ってどういうこと？
「ハック」と聞くと、ちょっと物騒なイメージを持つ人もいるかもしれない。コンピューターに侵入する、とか。でも、ここでいう「ハック」は、もっとポジティブな意味合いだ。
具体的には、既存の枠組みや常識にとらわれず、工夫やアイデアによって物事を効率的に改善したり、より良い状態に導いたりすること。言ってみれば、隠された裏技を見つけて、自分だけの攻略法を編み出すようなものだ。SNSは今、単なる情報発信の場を超え、この「人生ハック」のための強力なツールへと進化している。単なる消費や発信で終わらない、新しいSNSとの付き合い方が、きっとあなたの日常を変えるはずだ。
「映え」の向こう側で、僕らは何を手に入れたか？
僕らはみんな、日々の生活の中で、大小さまざまな「これ、どうにかならないかな」という壁にぶち当たっている。別に人生を大きく揺るがすような問題じゃなくても、ちょっとした不便さや、漠然とした不安感。それらが積み重なって、気づけば「なんか疲れてるな」って気分になる。そんな時、どうするだろう？ 昔なら誰かに相談したり、専門書を漁ったり、あるいは「そういうもんだ」と諦めたりしたかもしれない。でも、今は違う。僕らは、もっと身近で、もっとリアルな「攻略本」を手にしている。それが、情報と人が渦巻くSNSなんだ。
SNSで「食」の悩み、まさかの攻略
たとえば、これは僕の友人の話なんだけど、彼、本当に料理が苦手だったんだ。一人暮らしを始めて何年経っても、レパートリーは片手で数えられるほど。コンビニ飯と外食で食費はかさむし、たまに作るご飯は、栄養バランスも正直、目を背けたくなるような状態。休日のたびに「今度こそ自炊を頑張るぞ！」って意気込むんだけど、スーパーに行けば何を買えばいいか分からないし、いざキッチンに立ってもレシピ本とにらめっこしては「あ、これ、あの調味料がない…」ってなって、結局、またUber Eatsを頼む日々。周りの友人たちは、それなりに自炊を楽しんでる風に見えるし、おしゃれなカフェでランチしてる写真なんかも流れてくる。そんな「映え」情報を見るたびに、彼はちょっとだけ、肩身が狭いような、置いて行かれているような気持ちになっていたんだとか。
そんな彼が、ある日、SNSで「#ずぼら飯」とか「#ワンパンパスタ」ってハッシュタグを見つけたんだって。これまで見てきた「映え」系の料理写真とは一線を画す、ちょっと雑だけど、妙に美味しそうな、リアルな料理の数々。洗い物が少ないとか、包丁を使わないとか、とにかく「いかに手間をかけずに美味しいものを作るか」に特化した投稿がずらりと並んでいたらしい。
彼は半信半疑で、いくつか試してみた。最初は「え、これでいいの？」って戸惑ったみたいだけど、投稿されているのは、どれも具体的な手順と、使った材料の正直なレビュー。失敗談なんかも赤裸々に語られていたりして、その飾らない情報が、逆に彼の心に響いたんだ。「完璧じゃなくてもいいんだ、まずはやってみよう」って。
それからだ。彼の生活が少しずつ変わり始めたのは。
彼は、SNSで見つけたレシピを参考に、仕事帰りでもサッと作れる野菜炒めや、フライパン一つで完結するパスタ料理を覚え始めた。冷蔵庫の中は、これまでスカスカだったのが嘘のように、少しずつ食材が増えていった。しかも、ただレシピを真似するだけじゃなく、他のユーザーが「この調味料を加えるとさらに美味しくなるよ」とか「この野菜で代用できる！」ってコメントしているのを見て、自分なりにアレンジを加えたりもするようになったんだ。
驚いたのは、彼が「食費が月に1万円くらい浮いた」って言ってたこと。それだけじゃない。料理をする習慣ができたことで、日々の達成感が増えたり、何より「自分で自分の健康を管理できている」っていう自信が生まれたんだって。体調も良くなったし、朝も前よりスッキリ起きられるようになったとか。
SNSは、彼にとって「完璧な誰かの日常」を見せつけられる場所ではなく、「等身大の自分を、少しでも良くしていくためのヒント」が詰まった場所へと変貌したんだ。それは、彼がそれまで抱えていた「面倒くさい」とか「できない」という壁を、一つ一つ取り払っていくための、まさに「人生ハック術」だった。この話を聞いて、僕もハッとしたんだ。僕らが本当に求めている情報って、もしかしたら、フィルターがかかってない、リアルな声なのかもしれないなって。
なぜ「等身大の情報」が僕らの心を掴むのか？
完璧な笑顔と、きらびやかな日常。それらに憧れる気持ちは、いつだって僕らの心のどこかにあった。でも、どうだろう。SNSを開くたびに「自分はまだまだだな」とか「みんなはすごいな」って、ちょっとだけ疲れてしまうことはなかっただろうか。僕らが求めているのは、もしかしたら、もっと泥臭くて、もっと正直な情報だったのかもしれない。
僕の友人が料理の悩みを解決できたのは、彼が見た投稿が「完璧な料理」じゃなかったからだ。洗い物が少ないとか、包丁を使わないとか、とにかく「いかに楽をするか」にフォーカスした、ある意味で”ずぼら”なレシピの数々。そこには、フォロワー数を稼ぐための技巧や、見栄を張るための演出はほとんどなかった。ただ、目の前の「料理が面倒くさい」という課題に、真剣に向き合っている誰かのリアルな知恵が詰まっていたんだ。
「不完全さ」が教えてくれる、僕ら自身の可能性
人間って、完璧なものを見せられると、最初は感動するけど、次第に「自分には無理だ」って壁を作ってしまうものじゃないかな。でも、ちょっとだけ不完全で、ちょっとだけ失敗談も語られていて、でもちゃんと解決策を示してくれる情報に触れると、「あれ？これなら僕にもできるかも」って、不思議と一歩踏み出せる。
SNSは、もう誰かの「すごい日常」を眺めるだけの場所じゃない。自分と同じように、日々の中で小さな壁にぶつかり、それを乗り越えようともがいている人たちの、生きた知恵や工夫が集まる「集合知の宝庫」へと進化しているんだ。食費の節約術、賢い働き方、日々のストレスとの付き合い方、あるいは、新しい趣味の見つけ方まで。あらゆるジャンルにおいて、僕らの「面倒くさい」や「困ったな」に寄り添い、具体的な「ハック術」を共有してくれる誰かが、きっといる。
それは、一方的に情報を受け取るのではなく、自分もまた、その「集合知」の一部となって、誰かの役に立つかもしれないという、新しい参加意識を生み出している。見慣れたスクロールの先に、自分の人生を少しだけアップデートしてくれるような、とっておきのヒントが隠されているかもしれない。そんな風にSNSを眺めてみると、いつものタイムラインが、まるで違う景色に見えてくるはずだ。
まとめ：あなたの「面倒くさい」を「楽しい」に変える、たった一つの視点
「映え」から「ハック」へ。この変化は、僕らがSNSに求めるものが、表面的な美しさから、もっと本質的な「課題解決」へとシフトした証拠だ。
だから、もしあなたが今、何かしらの「面倒くさい」や「どうにかならないかな」という気持ちを抱えているのなら、一度、SNSとの向き合い方を変えてみてほしい。誰かの完璧な日常を羨むのではなく、あなたの身近な「困った」を、検索窓に打ち込んでみるんだ。ハッシュタグを辿ってみるんだ。
きっとそこには、同じような悩みを抱え、自分なりの工夫でそれを乗り越えてきた、等身大の誰かの知恵が溢れているはずだ。その情報に触れることで、あなたの「面倒くさい」は、きっと「これならできるかも」という希望に変わり、そして、いつか「楽しい」へとアップデートされる。
SNSは、あなたの人生を、もっと自由に、もっと豊かにするための、パワフルなツールになり得る。その可能性に気づいた時、あなたの毎日は、きっと今よりずっと、輝き出すはずだ。
コメント